01-03;ウイルス感染症
アデノウイルス
- 51の亜型がある。
- 夜間には39〜40℃の高熱が平均5日間続く。この間腹痛や軽い結膜炎を伴うことも少なくなく、結膜炎が明瞭であれば咽頭結膜熱となる。また時に頭痛も強い。
- 発疹が出ることもある。
- プールの消毒に用いる塩素濃度が0.4ppm以下であるとアデノウイルスは活性を保つ。
- 散発的流行は通年的に認められる。
- 7型による肺炎は致死的になることもある。
咽頭結膜熱(pharingoconjunctival fever;PCF)
- PCFを起こす主なウイルス型は1,3,4,7型であるが、3,7型は重症化する傾向がある。特にアデノウイルス7型による肺炎は、心肺に基礎疾患を有する小児では重症化することが多い。
- アデノウイルスの排泄は症状発現の3日前から14日後まで証明され、長時間、環境表面で安定である。例えばプラスチックや金属のような平滑な表面には最大49日間、衣類では文献上は8〜10日間生き続けることが報告されている。またアデノウイルスはエンベロープのないウイルスなので70%アルコールで不活化される。
- 年齢別では例年5歳以下が全体の70%を占め、9歳までが90%以上を占める。
- PCFの潜伏期間は5〜7日。
- アデノウイルス迅速診断キットは感度は70〜90%、特異度は100%
インフルエンザ
疫学
- 1957年(昭和32年)当時新型としてアジア型インフルエンザ(A/H2N2)が大流行した。
所見
- 子供では認められないことが多いが、咽頭後壁のリンパ濾胞が発赤、腫脹が目立つ(特に成人では明瞭なことが多いので注意)。
ワクチン
- 平成6年(1994年)臨時接種からはずれ任意接種となった。
- 65歳以下の発症予防効果は70〜90%。65歳以上で死亡を阻止する効果は80%以上。
- 1歳以上〜6歳未満での幼児への発病阻止効果は約20〜30%。
インフルエンザ脳症
- 3歳以下の乳幼児に好発し、死亡率は30%、救命されても約25%は重篤な神経学的後遺症を残す。γグロブリン大量療法、ステロイドパルス療法、シクロスポリン療法が試みられるが治療は確立していない。
- 脳浮腫の予防が大切。
- 通常の劇症肝炎と異なり、総ビリルビンは正常
Reye症候群
- 肝生検によって脂肪変性、ミトコンドリアの変形などの特徴的所見が得られる。
ポリオ
- 日本では1961年までは毎年1000人以上、死亡も100人以上であった。
- 典型的な麻痺型ポリオでは、潜伏期を経て1〜10日間のかぜ症状の後、四肢の筋力が非対称性に低下する急性弛緩性麻痺が突然現れる。嚥下、発語、呼吸の障害があり死亡例の大半は急性呼吸不全である。
ロタウイルス胃腸炎
- 世界では毎年60万人以上の小児が死亡していると推計されている。
- 5歳未満の急性胃腸炎による入院例の原因の4割がロタウイルス、流行期には5割以上。毎年5歳未満では1000人あたり4人前後が入院する。
- 入院が必要な患児の約7割は2歳未満。
- 感染力が強いため、衛生水準の向上だけでは流行を制御できない。先進国も発展途上国も頻度に違いがない。
- 新生児の多くが生後2年の間にロタウイルスに何回か感染する。初回感染が最も重くその後の感染では軽症化する。不顕性感染になることもある。
- ワクチンは中等度以上のロタウイルス下痢症の発生を95%以上抑制する。
RSウイルス感染症
- 乳幼児は生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%が初感染を受ける。
- RSV感染症の潜伏期は3〜5日。平均4日。
- 日本では年間2〜3万人の入院例。多くは8〜15日間で軽快。20%は3週間以上、10%は1カ月以上症状が持続。
バリビズマブ(RSウイルスヒト化モノクローナル抗体);シナジス
- 在胎28週以下の早産で12カ月齢以下の新生児および乳児
- 在胎29〜35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児。
- 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24ヶ月齢以下の新生児および乳幼児
- 24ヶ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児および乳幼児
- 大腿外側部への筋肉内注射。毎月。1バイアルあたり15万円。
ヒトメタニューモウイルス
- 生後1年以内の気道感染の主な原因
- 感染は生後6カ月ごろから始まり、2歳までに約半数、遅くとも10歳までにすべての小児が初感染する。
- 3〜6月に流行のピーク。潜伏期間は4〜6日。(RSVは10〜3月)
- 上気道炎を生じ、大半が軽症で治癒する。発症後90%以上の患児で発熱、咳、鼻汁を認め、呼吸困難や嘔吐下痢、頭痛を生じる。発熱期間は平均5日と長い。喘息様気管支炎や細気管支炎を来す例が多く、肺炎を生じる場合もある。重症度はRSVと同様で、臨床症状での鑑別は困難。
ライノウイルス
伝染性紅斑
- 経気道的にHPV-B19に感染すると、約1週間でウイルス血症が起き、5〜6日続き、軽度の感冒症状を呈する。
- 浮腫性紅斑が見られ、紅斑の中央が消退して残った辺縁がつながって網状を呈する。痒みを訴える例が少なくないが、抗ヒスタミン薬の内服程度の対応がよい。しばらく入浴、興奮、紫外線の刺激で紅斑が数週間くりかえし出現することもある。
- 妊婦に感染した場合、胎児への感染(10%以下)が成立すると流産につながり得る。
- 顔面に紅斑が出現し、1〜2日遅れて四肢に紅斑が出現する。
突発性発疹
- 38℃以上の発熱期間が平均約4日。
- 永山斑;両側の口蓋垂根部に認められる数個の粟米粒大の小結節性隆起。有熱期より出現し早期診断に有用。
手足口病
- 潜伏期間は2〜5日間
- コクサッキーウイルス6,9,10,16、エンテロウイルス71(中枢神経合併症に注意)
- 2011年にコクサッキーA6による流行では、爪が脱落した(一部だけ)。脱落した爪甲は爪母より再生し、元に戻る。
ヘルパンギーナ
- コクサッキーウイルスA群、ときにB群、エコーウイルス(いずれもエンテロウイルス属ピコルナウイルス科に属する)
- 熱くなく、酸味辛み強くなく、のどごしの良い食事;ゼリー、冷ましたおかゆ、おじや、冷やしたうどん、そうめん、バニラアイスなど。
- 潜伏期は2〜4日間
流行性耳下腺炎
- 両側の耳下腺腫脹をきたす疾患としてパラインフルエンザウイルス(1・3型)による耳下腺炎がある。
- ムンプス難聴;1万人に1人の合併症(もっと高頻度との報告も;500人に1人))。一度発症すると非可逆的。通常片側に発症
- ムンプス髄膜炎;耳下腺腫脹の前から発症する場合もある。10%以上(1〜10%)。1989年から1993年にかけてのMMRワクチンは1000人に1人の割合で髄膜炎を起こした。髄膜脳炎は0.3%以下。
- 思春期以降に感染した男性の約20%で精巣炎を起こす(15歳以上)。卵巣炎は成人女子の5%。膵炎は4%。
- その他;心筋炎。関節炎。
麻疹
- 不顕性感染はきわめて少なく95%以上が発症
- 接触後5日以内に免疫グロブリン製剤を投与すれば、症状を軽減できる。
- 喉頭炎 肺炎2種(二次感染による細菌性肺炎と麻疹ウイルスによる巨細胞性肺炎)
水痘
- 小脳の炎症、急性小脳失調症がある。水痘の皮疹がほぼ治りかけた発症7〜14日後に発症し、数日から数週間失調症状が持続する。自然軽快が期待され予後は良好である。髄液所見は正常。免疫学的機序により発症すると考えられている。(一部に恒久的な症状が残ることもある)。罹患後1000人に3人ぐらいに発生。
風疹
- 先天性風疹症候群;小頭症、知的障害、低出生体重は約40%にみられる。感音性難聴(50%)、先天性心疾患(50〜80%)、白内障(30〜50%)、小眼球症。妊婦の風疹が不顕性であっても発症しうる。
GCS(Gianotti-Crosti syndrome)
- 丘疹主体の皮疹が下肢に出現し、その後に上行して上肢や顔面に拡がる。
下部呼吸器疾患
- 新生児や小児の下部呼吸器疾患の原因となるウイルス;RSV、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス
クループ症候群
- 吸気性喘鳴。オットセイ様。3ヶ月〜5歳
- パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RS感染症、アデノウイルスの頻度が高い。
- アドレナリン吸入。
急性喉頭蓋炎
- 頸部を伸展し下顎を前に付き出した座位の姿勢が特徴的。舌圧子の刺激で窒息のリスクがある。
ウイルス性髄膜炎
- 原因ウイルスとしてはエコー、コクサッキー、ムンプスウイルスの3つが特に多く、前2者あわせて約80%、ムンプスが約10%を占める。